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医療AI用語集
提案書や会議で出てくる医療AIの用語を、実務で判断するために必要な範囲でまとめています。用語名をクリックすると、その用語だけを直接リンクで共有できます。
制度・法令に関わる用語は日本の制度(薬機法・個人情報保護法など)に沿って記載していますが、要約であり条文そのものではありません。実際の判断では出典の原文と、必要に応じて所管官庁・専門家の確認をお願いします。
性能指標
- 感度 Sensitivity、再現率(Recall)とも呼ばれます
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実際に疾患がある人を、AI が正しく「陽性」と判定できる割合です。感度が低いと、疾患があるのに見逃してしまう例(偽陰性)が増えます。
実務での意味がんや敗血症のように、見逃したときの影響が大きい疾患のスクリーニング用途を検討する際、最初に確認したい数値です。提案書に「正確度 95%」といった総合的な数字しか示されていない場合、見逃しがどの程度あるのかは分かりません。感度を別に示すよう求めてください。実際、米国の大学病院で広く使われていた敗血症予測モデルを外部データで検証したところ、感度は 33% にとどまったという報告があります。
- 特異度 Specificity
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疾患がない人を、AI が正しく「陰性」と判定できる割合です。特異度が低いと、実際には問題がないのに陽性と判定される例(偽陽性)が増えます。
実務での意味特異度が低いツールは、不要な追加検査とアラートを増やし、看護現場のアラート疲労と院内の検査コストの両方を押し上げます。感度と必ず対にして確認し、導入後の業務量とコストへの影響を見積もってください。前述の敗血症予測モデルの外部検証では、特異度は 83% と報告されています。
- AUROC / AUC Area Under the ROC Curve、曲線下面積
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AI の判定基準を厳しくしたり緩めたりしながら、感度と特異度がどう変わるかを描いた曲線(ROC 曲線)の、下側の面積を 0 から 1 の数値で表したものです。1 に近いほど識別力が高く、0.5 はコイン投げと同じ水準を意味します。
実務での意味提案書の性能を 1 つの数字で比べるときに、最もよく登場する指標です。ただし開発元の社内試験で高く出た値が、自院の患者層でも再現されるとは限りません。米国の大学病院で商用の敗血症予測モデルを外部検証したところ、AUC は 0.63(95% CI 0.62-0.64)まで下がったという報告があります。「どの患者集団で、誰が検証したのか」を必ず併せて確認してください。
- 適合率・陽性的中率 Precision / Positive Predictive Value(PPV)
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AI が「陽性」と判定したもののうち、実際に疾患があった割合です。この値が低いと、陽性アラートの多くが偽陽性になります。
実務での意味疾患そのものがまれな状況(有病率が低い病棟)では、AUROC が高くても適合率は低く出ます。前述の敗血症予測モデルの外部検証では、陽性と判定されたうち実際に敗血症だったのは 12% でした。アラートを実際にさばく看護現場の負担を見積もるには、この指標を確認するのが現実的です。
- 偽陽性 / 偽陰性 False Positive / False Negative
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偽陽性は疾患がないのに「ある」と判定した場合、偽陰性は疾患があるのに「ない」と見逃した場合を指します。診断支援 AI は必ずこの 2 つのあいだでバランスを取っています。
実務での意味どちらを優先して減らすかは、病院側の方針判断です。偽陰性を減らそうと感度を上げれば偽陽性のアラートが増え、その逆も成り立ちます。導入検討会では「自院のこの病棟では、どちらの誤りがより危険か」を先に合意しておくと、しきい値の設定が決められます。
規制・認証
- プログラム医療機器(SaMD) Software as a Medical Device、医療機器プログラム
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装置に組み込まれるのではなく、ソフトウェア単体で診断や治療などの医療目的を果たすものを指します。PMDAは、規制対象となるプログラム医療機器を「医療機器としての目的性を有しており、かつ、意図したとおりに機能しない場合に患者(又は使用者)の生命及び健康に影響を与えるおそれがあるプログラム」と説明しています。人の生命及び健康に影響を与えるおそれがほとんどないものは除かれます。日本では医療機器プログラムとも呼ばれ、SaMDはこの医療機器プログラムを指す語として使われます。
実務での意味AI製品がプログラム医療機器に当たる場合、一般のITシステムではなく医療機器としての手続きを経た製品かどうかが導入の前提になります。医事課や経営企画としては、購入検討の入口で「この製品は医療機器として承認・認証・届出のいずれを受けているか」を確認しておくと、その後の検討が早く進みます。なお、プログラムの医療機器該当性については、厚生労働省がSaMD一元的相談窓口(医療機器プログラム総合相談)を設けています。
- 薬機法に基づく承認・認証・届出 医薬品医療機器等法(薬機法)による製造販売の手続き
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医療機器は人体へのリスクに応じてクラス分けされ、必要な手続きが変わります。PMDAの説明では、一般医療機器(クラスI)はPMDAへの届出により製造販売が可能、管理医療機器(クラスII)は認証基準のあるものについて第三者認証機関による認証が必要、高度管理医療機器(クラスIII・IV)は厚生労働大臣の承認が必要でPMDAが審査を行うとされています。2014年11月25日からは、クラスIIIでも認証基準のあるものは第三者認証が可能になりました。AIを用いた医療機器もこの枠組みの中で扱われます。
実務での意味提案書に「薬事対応済み」とだけ書かれていても、承認なのか、認証なのか、届出なのかで審査の重さが違います。医事課・経営企画の確認としては、一般的名称、承認番号(認証番号・届出番号)、そして添付文書に記載された使用目的を突き合わせ、院内で想定している使い方がその範囲に収まっているかを見ておくことが実務的です。範囲を外れた使い方は、購買・法務の検討事項になります。
- 臨床評価 Clinical Evaluation、臨床的な妥当性
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医療機器が意図した臨床上の目的を、実際の患者において信頼できる形で果たせるかどうかを、臨床データにもとづいて確かめることです。試験室での性能ではなく、臨床現場での性能を指します。日本の医療機器の製造販売承認申請では、添付資料の一つとして「臨床試験の試験成績に関する資料」が位置づけられており、PMDAは臨床評価報告書および臨床評価相談用資料作成の手引きを公開しています。
実務での意味開発元の社内データが良好でも、どの患者集団で、誰が評価したのかが自院と大きく違えば、同じ性能が出るとは限りません。提案書を読むときに「どの患者集団で臨床的に確かめられたのか」「その集団は当院の患者層と近いのか」を質問する根拠になります。回答が曖昧なまま導入すると、稼働後の性能低下を説明できなくなります。
- 変更計画の確認(IDATEN) Improvement Design within Approval for Timely Evaluation and Notice
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承認を受けたあとに改良していくことが見込まれる医療機器について、想定される変更の内容と評価の方法をあらかじめ計画として提出し、確認を受けておく仕組みです。厚生労働省は2020年8月31日付で「医療機器の変更計画の確認申請の取扱いについて」(薬生機審発0831第14号)を発出しています。さらに2023年12月22日には「医療機器、人工知能関連技術を活用した医療機器、プログラム医療機器の変更計画の確認申請に関する質疑応答集(Q&A)」および「プログラム医療機器の変更計画の確認申請に関する申請書及び添付資料の記載事例について」が事務連絡として出されており、AI関連技術を使った医療機器も想定されています。
実務での意味AI製品は導入後も更新が続きます。更新のたびに一から手続きをやり直すのか、あらかじめ確認された計画の範囲内で進むのかによって、保守契約の条件も、院内で必要になる再検証の手間も変わります。契約書のバージョンアップ条項や保守範囲を読むときに、開発元へ確認すべき点を絞り込むための前提知識になります。
技術・モデル
- 生成AI Generative AI
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学習したデータのパターンをもとに、文章・画像・要約などの新しい内容を作り出す AI です。総務省の情報通信白書では、テキスト・画像・音声などを生成できる AI 技術の総称として整理されています。
実務での意味診療記録の要約や説明文書の下書きなど、医事課や看護部の事務作業に急速に入ってきている種類の技術です。単なる事務作業の効率化にとどまるのか、診療上の判断に関わるのかで院内に必要な確認体制が変わりますので、用途の切り分けを最初に整理しておくと検討が進めやすくなります。
- 大規模言語モデル(LLM) Large Language Model
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大量のテキストを学習して人間の言語を理解し、生成する生成AI の一種です。総務省の情報通信白書では、基盤モデル(Foundation Model)や大規模言語モデルの登場が、生成AI の普及を支えた技術的要因の一つとして挙げられています。
実務での意味病院で目にする問い合わせ対応・要約・文書作成の AI は、その多くが LLM を基盤にしています。LLM はもっともらしく見えて事実と異なる出力を返すことがありますので、出力を人が必ず確認するという前提を運用ルールに書き込んだうえで導入してください。
- ハルシネーション Hallucination、幻覚
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生成AI が、事実ではない内容をもっともらしい文章として出力してしまう現象です。モデルが「事実かどうか」ではなく「もっともらしい文章かどうか」を基準に出力を組み立てるために起こります。要約、対話、質問応答など、自然言語生成の幅広いタスクで以前から報告されている問題です。
実務での意味薬剤の用量、診断名、参考文献などでハルシネーションが起きると、患者安全に直接つながります。生成AI を導入する際は「出力を誰が、どの段階で検証するのか」を必ず決めてください。
- 機械学習 Machine Learning
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人がルールを一つひとつ書き下すのではなく、データからパターンを自ら学び取って予測や判定を行う AI の手法です。深層学習(ディープラーニング)はその一つの方式にあたります。
実務での意味学習に使ったデータが偏っていれば、出力も偏ります。WHO は、主に高所得国で集めたデータで学習したシステムは、それ以外の環境の人々に対しては十分に機能しない可能性があると指摘しています。導入を検討する際に「どのようなデータで学習したのか」を確認し、自院の患者層と合っているかを見るための土台になる概念です。
- 説明可能性 Explainability
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AI がなぜその判断に至ったのかを、人が理解できる形で示せる性質です。WHO は保健医療分野の AI に関する 6 つの指針原則の一つとして、透明性・説明可能性・理解可能性の確保を挙げています。
実務での意味根拠の分からない「ブラックボックス」なアラートは、看護師や医師が信頼して対応することが難しくなります。説明の乏しいツールは現場での受け入れが進みませんので、判断の根拠を併せて提示できるかどうかを、導入評価の項目に入れておいてください。
データ・個人情報
- 電子カルテ Electronic Medical Record(EMR)
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これまで紙の診療録に記載していた患者基本情報、既往歴、診療・検査・投薬の記録などを、電子的に入力・保存・管理するシステムです。厚生労働省は医療分野の情報化を進めるにあたり、施設間で情報を連携できるよう標準規格を定めています。
実務での意味院内で使う AI の多くは、電子カルテのデータを入力として動きます。どの項目をどの形式で受け渡すかが、導入の難易度と個人情報の取扱い範囲を左右しますので、医事課と情報システム担当の検討はここから始まります。
- 仮名加工情報 Pseudonymously Processed Information
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個人情報保護委員会は、仮名加工情報を「他の情報と照合しない限り特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報」(個人情報保護法第2条第5項)と説明しています。作成した事業者は元の個人情報や削除情報を持っていることが通常のため、原則として個人情報に当たります。第三者への提供は原則として禁止されており(法第41条第6項)、法令にもとづく場合、委託、事業承継、共同利用が例外として整理されています。一方で、変更前の利用目的と関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて利用目的を変更できる点が特徴です(法第41条第9項)。
実務での意味院内での分析や精度検証にカルテ由来データを使う場面で選択肢になる類型です。ただし外部への提供は原則できないため、AI事業者からデータ提供を求められたときは、まず「院内で使うのか、社外へ出すのか」「委託として整理できるのか」を切り分ける必要があります。ここを曖昧にしたまま契約を進めると、後から手戻りが発生します。
- 匿名加工情報 Anonymously Processed Information
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個人情報保護委員会は、匿名加工情報を「特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報であって、当該個人情報を復元することができないようにしたもの」(個人情報保護法第2条第6項)と説明しています。個人情報には該当せず、本人の同意を得ることなく第三者へ提供できます。その代わり、氏名や個人識別符号の削除など適切な加工を行うこと、加工方法等の情報について安全管理措置を講じること、作成時および第三者提供時に含まれる情報の項目を公表すること、本人を識別する目的で他の情報と照合しないことといった義務が課されます。
実務での意味AI開発や研究のために院外へデータを出す話が持ち上がったときに検討される類型です。同意が不要になる代わりに、加工と公表の義務を誰が負うのかが実務上の論点になります。作成者は病院なのか事業者なのかを契約前に明確にしておかないと、公表漏れや再識別の責任が病院側に残る形になりかねません。なお医療分野には別枠として次世代医療基盤法(医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報及び仮名加工医療情報に関する法律、平成29年法律第28号)があり、医療機関はオプトアウトを前提に認定事業者へ医療情報を提供できる仕組みが用意されています。
出典: ppc.go.jp (新しいタブで開きます) / ppc.go.jp (新しいタブで開きます) / www8.cao.go.jp (新しいタブで開きます)
導入・運用
- 臨床意思決定支援システム(CDSS) Clinical Decision Support System、日本でも CDSS と略して呼ばれます
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患者データと医学知識を組み合わせ、診療の場面で警告・推奨・参考情報を示すことで医療者の判断を助ける仕組みです。ルールベースのものから AI を用いたものまで方式は幅広く、日本語では臨床意思決定支援システムと呼ばれます。
実務での意味薬剤相互作用の警告や急変リスクの通知など、病棟で実際に鳴っているアラートの多くは CDSS の出力です。アラートが多くなるほど医療者はそれを読み飛ばすようになり、ある系統的レビューでは薬剤安全に関するアラートの 49〜96% が却下されていたと報告されています。アラートの内容と頻度をどう調整するかは、看護部と医事課が一緒に決めるべき運用課題です。
- 製造販売後の安全管理 Post-market Surveillance、市販後安全対策
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医療機器を市場に出したあとも、実際の使用環境で安全性と性能を確認し続ける取り組みです。日本では、医療現場でみられた医療機器の不具合等の情報を、病院・診療所の開設者や医師などの医薬関係者が厚生労働大臣に報告する制度が薬機法第68条の10第2項にもとづいて設けられています。また、厚生労働大臣が指定する医療機器については、製品の特性に応じて期間を設定し、その期間中に使用成績に係る調査を行って有効性や安全性を確認する使用成績評価の仕組みがあります。
実務での意味導入時点で良好だった性能が、患者層や運用の変化とともに下がることがあります。AIを使った製品では特に、院内で実際の的中状況を追い、契約に性能モニタリングと再検証の条項を入れておくことが医事課・経営企画の担当範囲になります。あわせて、不具合に気づいた職員が誰にどう伝えるのか、院内の報告経路をあらかじめ決めておく必要があります。
この用語集は韓国語版をもとに、日本の制度に合わせて書き直したものです。制度に関わる項目は公式の資料で確認したうえで記載し、確認できなかった内容は掲載していません。